まゆハ行政書士事務所
親なきあと支援・民事信託コンサルタント/代表行政書士 麥生田 勇

暮らしの支援

親なきあと、頼れる身寄りがいなくなったら入院の手続や死後の事務は誰が?社会福祉法等の改正(2026年6月公布)で広がる支援と「地域権利擁護相談支援センター」

親が亡くなったあと、障がいのあるお子さんに頼れる身寄りがいなくなったら、日々のお金の管理、入院・入所の手続、亡くなったあとの葬儀や届出は誰が支えるのでしょうか。2026年6月に成立・公布された社会福祉法等の改正は、いまの日常生活自立支援事業にあたる事業を、入院・入所等の手続支援や死後事務の支援まで広げる形で見直すものです。ただし、新しい支援はまだ始まっておらず、施行はこれからです。成年後見制度などの利用を支える中核機関「地域権利擁護相談支援センター」を市町村が置けるようにする改正とあわせて、厚生労働省・参議院・大阪市の資料に基づき、決まったこと、まだ決まっていないこと、いま大阪市で使える窓口を整理します。

「親がいなくなったら、入院の手続や葬儀は誰がするの?」

こうした「頼れる身寄りがいない」人への支援を制度として整えるための法律が、2026年6月に成立しました。この記事では、次の章から厚生労働省・参議院・大阪市の資料に基づいて、何が決まり、いつ始まり、何がまだ決まっていないのかを整理します。新しい支援はまだ始まっていませんので、いま使える窓口もあわせてご案内します。

2026年6月に成立・公布された改正法:いつ決まり、いつ始まるのか

参議院の議案情報によると、「社会福祉法等の一部を改正する法律案」は2026年(令和8年)4月3日に内閣から国会に提出され、5月26日に衆議院本会議で、6月19日に参議院本会議で可決されて成立しました。公布は6月25日で、法律番号は令和8年法律第51号です。厚生労働省などが公布の日に自治体あてに出した通知でも、同じ日に公布されたことが示されています。 [1] [2]

ただし、公布されたことと、実際に始まること(施行)は別です。公布通知によると、この法律は原則として2027年(令和9年)4月1日に施行されますが、この記事で取り上げる事業の見直し(福祉サービス利用援助事業の見直し)は、「公布の日から起算して2年を超えない範囲内において政令で定める日」に施行するとされています。つまり、公布日(2026年6月25日)から2年以内のどこかで始まることは決まっていますが、具体的な日はこれから政令で決まります。 [2]

時点の整理

  • 成立:2026年6月19日(参議院本会議で可決)
  • 公布:2026年6月25日(令和8年法律第51号)
  • 施行(法律全体の原則):2027年4月1日
  • 施行(この記事で取り上げる事業の見直し):公布の日から2年以内の、政令で定める日(具体的な日は本記事では確認できていません)

新しくなる事業の内容:日常生活・入院入所の手続・死後事務の3つの支援

厚生労働省・こども家庭庁の概要資料は、この見直しを「頼れる身寄りがいない高齢者等への支援の充実」という見出しで説明しています。これまで家族や親族が担ってきた金銭管理、入院・入所の手続、死後の手続などに対応する仕組みが求められているとして、日常生活支援、入院・入所の手続支援、死後の事務の支援などを、利用者の一定割合以上に無料または低額で提供する事業として、社会福祉法の第二種社会福祉事業に位置付け、多様な主体が担えるようにするとしています。事業の名前は、いまの「福祉サービス利用援助事業」から「福祉サービス・保健医療サービス等利用援助事業」に変わります。 [3]

概要資料の図では、支援の中身が次のように例示されています。 [3]

1. 日常生活支援

福祉サービスの利用援助、日常的な金銭管理サービス、書類等の預かりサービス。資料では、いまの福祉サービス利用援助事業と同様の内容とされています。

2. 入院・入所等の手続支援

入院・入所の手続の支援、緊急連絡先の提供、費用の支払代行など。

3. 死後事務の支援

葬儀や納骨、家財処分の契約手続、行政への届出など。

利用料については、概要資料に「資力の要件に該当する者は無料又は低額」と書かれています。資力の要件の中身や、要件にあたらない人の料金は、この資料には示されていません。 [3]

法律の条文の上では、公布通知によると、対象は「精神上の理由又は近隣に居住する家族がいないことその他の理由により日常生活又は社会生活を営むのに支障がある生計困難者」とされ、福祉サービスの利用の援助に加えて、「保健医療サービス又は葬祭その他の生計困難者が死亡した場合に必要なサービスの利用の援助」も行う事業に改めるとされています。 [2]

障がいのある人も対象になるの?――資料から分かること・分からないこと

概要資料は、見出しでは「高齢者等」としていますが、図の対象者の欄には「頼れる身寄りがいない高齢者等」と「判断能力が不十分な者」の2つを挙げています。また、身寄りのない人の相談対応を、地域包括支援センター(高齢者分野)、生活困窮者自立相談支援事業(生活困窮分野)とならんで、障害者相談支援事業(障害福祉分野)の対象として明確にするとしています。 [3]

いまの日常生活自立支援事業にあたる大阪市の「あんしんさぽーと事業」は、大阪市の案内で「認知症や知的障がい、精神障がい等により判断能力が十分ではない方」を対象としています。 [4]

まだ決まっていないこと:審議会の報告書と国会の附帯決議から

事業の細かい中身(対象者の範囲、契約の方法、料金など)は、本記事で確認した法律の概要資料と公布通知には書かれていません。手がかりになるのは、法律案の土台になった審議会の報告書と、国会の委員会が付けた附帯決議です。どちらも法律や政省令そのものではないため、実際の制度がこのとおりになるとは限りません。

社会保障審議会福祉部会の報告書(2025年12月18日)は、いまの日常生活自立支援事業が社会福祉法上の福祉サービス利用援助事業にあたることを前提に、これを「拡充・発展」させて新たな第二種社会福祉事業とする方向を示しました。報告書の段階では、次のような考え方が示されています。 [5]

  • 日常生活支援は必須とし、入院・入所等の手続支援と死後事務の支援は、少なくともどちらか一方を行う
  • 支援は、本人(または代理人)と実施主体との契約に基づいて行う。本人が契約する場合は、契約の内容を理解して判断できる能力が必要
  • 利用料は原則として利用者が負担し、無料または低額で利用できる要件にあたる人は減免する。葬儀・納骨・家財処分そのものの費用は、実費相当を利用者が負担する
  • 身寄りがある人を一律に対象外とすることは適当ではない
  • いま日常生活自立支援事業を利用している人が、希望すれば続けて利用できるよう、利用料などに配慮が必要ではないか(報告書は問いかけの形で示しています)

国会では、衆議院厚生労働委員会(2026年5月22日)と参議院厚生労働委員会(同年6月18日)が、法律案の可決にあわせて附帯決議(政府に検討や配慮を求める決議)を付けました。新しい支援事業については、事業が「利用料収入による運営を原則」としていることを踏まえ、「低所得者や生活保護受給者」が経済的な理由で必要な支援から漏れないよう、適切な利用料の設定や減免措置のあり方を検討することを、両院の委員会が求めています。また、対象者の範囲、支援内容、利用者との契約、死後事務の範囲、相続に関わる事務との切り分けなどについて、社会福祉協議会をはじめ、福祉、医療、法律などの関係者が参画して検討する場を設けることも求めています。 [6]

成年後見などの利用を支える中核機関「地域権利擁護相談支援センター」(2027年4月施行)

この記事で取り上げるもうひとつの改正が、成年後見制度などを適切に利用できるようにするための体制づくりです。公布通知によると、市町村は、地域における成年後見制度等の適切な利用の支援の「中核的な役割を担う機関」として、「地域権利擁護相談支援センター」を設置することができるようになります。関係機関などで構成する会議を市町村が組織できることも定められました。概要資料は、判断能力が十分でない方が成年後見制度や地域の権利擁護支援を適切に利用できる環境づくりが重要だとして、センターと会議体を法律に位置付けると説明しており、施行日は2027年(令和9年)4月1日です。 [2] [3]

いま大阪市で使える窓口

新しい事業やセンターが始まるまでのあいだも、相談できる窓口はあります。

日々のお金の管理や福祉サービスの利用に不安があるとき

大阪市の「あんしんさぽーと事業(日常生活自立支援事業)」は、判断能力が十分ではない方の福祉サービスの利用や日常的な金銭管理を手伝う事業で、相談先はお住まいの区の社会福祉協議会です。 [4]

成年後見制度について相談したいとき

大阪市は、「大阪市成年後見支援センター」を権利擁護支援の地域連携ネットワークの中核機関と位置付け、成年後見制度に関する相談、広報啓発、市民後見人の養成・支援などを行っていると案内しています。所在地は大阪市西成区出城の大阪市社会福祉研修・情報センター内です。 [7]

いまのあんしんさぽーと事業の大阪市の案内ページには、入院・入所の手続や死後事務についての記載はありませんでした。大阪市成年後見支援センターが、改正法の「地域権利擁護相談支援センター」になるのかどうかも、本記事では確認できていません。親が急病などで支えられなくなったときの緊急の受け入れについては、地域生活支援拠点等の記事もあわせてご覧ください。

知っておきたい注意点(未確認の点を含む)

  • 新しい支援はまだ始まっていません。事業の見直しの施行日は、公布の日から2年以内の政令で定める日です。施行日を定める政令は、本記事では確認できていません。
  • お住まいの地域で、いつ、誰が実施するかは未確認です。概要資料は多様な主体が担えるようにするとしていますが、大阪市でどの団体がいつから実施するかは、本記事では確認できていません。
  • 料金は未確認です。「資力の要件に該当する者は無料又は低額」とされていますが、要件の中身も、要件にあたらない場合の料金も、本記事では確認できていません。金額は実施機関の窓口でご確認ください。
  • 対象者の範囲と契約の方法は、これから検討される部分があります。障がいのある方がどこまで対象になるか、ご本人に契約の内容を理解する力が十分でない場合にどうなるかは、本記事では確認できていません。
  • 審議会の報告書と附帯決議は、制度そのものではありません。報告書は法律案ができる前の方向性、附帯決議は委員会が政府に求めた事項で、実際の制度は政省令や通知などで定められます。
  • 概要資料が示す2つの施行日(公布後2年以内の政令で定める日と、2027年4月1日)のうち、相談対応の明確化などがどちらにあたるかは未確認です。事業の見直しが前者にあたることは公布通知で確認しました。
  • 出典の資料には日付のないものがあります。厚生労働省・こども家庭庁の概要資料には作成日の記載がなく、大阪市成年後見支援センターの案内ページの日付は2024年1月16日です。最新の内容は各窓口でご確認ください。

親なきあとに向けて、今できること

以下は公的な事実ではなく、当事務所からの編集上の提案です。

  • 「いま親がしていること」を書き出す。日々のお金の管理、通院や入院のときの付き添いと手続、緊急連絡先、役所の手続など、親が引き受けていることを具体的に書き出すと、親なきあとに誰に何を頼む必要があるかが見えてきます。本人の希望と暮らしを整理する相談メモの記事も参考にしてください
  • いま使える支援とつながっておく。新しい事業が始まるのを待つのではなく、いまの日常生活自立支援事業や相談支援の窓口に、親が元気なうちから相談しておくと、支援する人がご本人のことを知っている状態をつくりやすくなります
  • 親自身の備えも並行して進める。親の判断能力が低下したときに備える任意後見契約・見守り契約、財産の残し方を決める遺言、財産の管理を託す民事信託(福祉型信託)は、親が元気なうちに親自身が内容を決めておく備えなので、新しい事業の開始を待たずに検討できます。どれが合うかはご家庭の事情によって異なります
  • お子さん自身の入院や死後の事務について、家族で話しておく。きょうだいや親族がいる場合、誰がどこまで関われるのか、関われないのかを前もって共有しておくと、公的な支援に何を頼む必要があるかを整理しやすくなります
  • 新しい事業の情報は、自治体と社会福祉協議会の案内で確かめる。開始の時期、実施する団体、料金、対象者は、これから決まる部分があります。開始を前提にほかの備えを止めてしまわず、決まった内容を確かめてから組み合わせを考えるのが安全です

参考情報・出典

  1. 参議院「議案情報 第221回国会 社会福祉法等の一部を改正する法律案」資料の日付:不明(ページに更新日の記載なし)。対象地域:全国。参照箇所:提出日(2026年4月3日、内閣提出)、衆議院本会議の議決日(5月26日、可決)、参議院本会議の議決日(6月19日、可決)、公布年月日(6月25日)、法律番号(51)。取得・確認日:2026年11月6日。
  2. 厚生労働省社会・援護局長、老健局長、障害保健福祉部長、こども家庭庁支援局長通知「社会福祉法等の一部を改正する法律の公布について(通知)」(社援発0625第10号ほか)資料の日付:2026年6月25日(通知日)。対象地域:全国。参照箇所:冒頭(令和8年法律第51号が同日公布)、第1の5(地域権利擁護相談支援センターの設置、関係機関等による会議)、第1の7(福祉サービス利用援助事業の見直し:対象者と援助内容)、第10(施行期日:原則2027年4月1日、第1の7は公布の日から起算して2年を超えない範囲内において政令で定める日)。取得・確認日:2026年11月6日。
  3. 厚生労働省(社会・援護局、障害保健福祉部、老健局)・こども家庭庁(支援局)「社会福祉法等の一部を改正する法律の概要について」資料の日付:不明(資料に作成日の記載なし。令和8年法律第51号の成立後の資料)。対象地域:全国。参照箇所:5ページ付近「頼れる身寄りがいない高齢者等への支援の充実」(現状・課題、第二種社会福祉事業への位置付け、事業名の変更、対象者、日常生活支援・入院入所等手続支援・死後事務支援の例、「資力の要件に該当する者は無料又は低額」、相談対応の明確化、施行日)、6ページ付近「成年後見制度等の適切な利用の支援」(地域権利擁護相談支援センターと会議体の法定化、施行日2027年4月1日)。ページ番号は要約からの推定を含みます。取得・確認日:2026年11月6日。
  4. 大阪市「あんしんさぽーと事業(日常生活自立支援事業)」資料の日付:2026年2月17日(ページ上の日付)。対象地域:大阪市。参照箇所:対象者(認知症や知的障がい、精神障がい等により判断能力が十分ではない方)、支援の内容(福祉サービスの利用や日常的な金銭管理)、相談先(お住まいの区の社会福祉協議会)。入院・入所の手続や死後事務についての記載がないことも確認。取得・確認日:2026年11月6日。
  5. 厚生労働省「社会保障審議会福祉部会報告書」(令和7年12月18日)資料の日付:2025年12月18日(報告書の日付)。対象地域:全国。位置付け:法律案の提出前に審議会が示した方向性で、実際の制度の内容を確定するものではありません。参照箇所:14〜18ページ付近(日常生活自立支援事業と福祉サービス利用援助事業の関係、新たな事業の方向性、必須とする支援、契約と本人の能力、利用料と減免、実費負担、身寄りの有無による一律の除外をしないこと、日常生活自立支援事業の利用者への配慮)。ページ番号は要約からの推定を含みます。取得・確認日:2026年11月6日。
  6. 厚生労働省「社会福祉法等の一部を改正する法律案等の附帯決議について」(社会保障審議会生活困窮者自立支援及び生活保護部会 第30回 資料4)資料の日付:2026年7月17日(会議の開催日)。対象地域:全国。参照箇所:衆議院厚生労働委員会の附帯決議(2026年5月22日)の十、参議院厚生労働委員会の附帯決議(2026年6月18日)の六(利用料収入による運営の原則、低所得者や生活保護受給者への配慮、適切な利用料の設定や減免措置、対象者の範囲・支援内容・契約・死後事務の範囲・相続関連事務との切り分けについて社会福祉協議会をはじめ関係者が参画して検討する場)。取得・確認日:2026年11月6日。
  7. 大阪市「大阪市成年後見支援センター」資料の日付:2024年1月16日(ページ上の日付)。対象地域:大阪市。参照箇所:センターの位置付け(権利擁護支援の地域連携ネットワークの中核機関)、業務(成年後見制度に関する相談、広報啓発、市民後見人の養成・支援など)、所在地。取得・確認日:2026年11月6日。

身寄りへの備えと当事務所への相談について

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