まゆハ行政書士事務所
親なきあと支援・民事信託コンサルタント/代表行政書士 麥生田 勇

遺言・相続の備え

遺言制度の見直し(2026年改正):法務局で預かる「保管証書遺言」の新設と、親なきあとの遺言で今できること

2026年6月に成立した遺言制度の見直し(保管証書遺言の新設、押印の任意化)の要点と施行時期、いま使える自筆証書遺言書保管制度のしくみ・手数料・大阪での手続を法務省・大阪法務局の案内に基づいて説明し、障がいのあるお子さんのために遺言を考える親が今できることを整理します。

何が決まったか:2026年6月成立の改正法と遺言制度の見直し

法務省の案内によると、「民法等の一部を改正する法律」(令和8年法律第45号)が2026年(令和8年)6月17日に成立し、同月24日に公布されました。この法律は成年後見制度と遺言制度の両方を見直すもので、遺言制度については、電子データなどで作成して法務局で保管する新しい方式の遺言「保管証書遺言」を創設することが柱です。 [1]

新しくできる「保管証書遺言」とは

法務省の概要資料では、保管証書遺言はおおむね次のような方式として説明されています。パソコン等で作成することができ、遺言者の署名またはこれに代わる措置が必要です。保管の申請はオンラインでもでき、遺言者が遺言の全文を口述し、法務局の遺言書保管官が本人確認を行って、法務局で保管します。遺言の存在は遺言者が指定した人に通知され、相続が始まった後の家庭裁判所の検認手続は不要とされています。 [2]

押印の任意化など、そのほかの見直し

同じ概要資料では、保管証書遺言の創設のほかに、次の見直しが示されています。自筆証書遺言・秘密証書遺言・特別の方式の遺言について、遺言者や証人等の押印の要件を廃止して押印を任意とすること(遺言書の加除・変更の際の押印要件も廃止)、証人等の欠格事由(証人になれない人)に受遺者の被用者などを加えること、死亡の危急に迫った人の遺言にパソコン等で作成したデータを録音・録画と証人1人以上の立会いのもとで遺言とする方式を加えること、などです。 [2]

なお、自筆証書遺言の「全文を手書きする」という要件そのものを変える記載は、確認した概要資料にはありませんでした。

いつから使えるか:施行時期と、それまでの遺言

法務省の案内では、施行日はいずれも政令で定める日とされ、遺言制度の見直しのうち押印の任意化などは公布の日から1年を超えない範囲内、システム改修を要する保管証書遺言の創設などは公布の日から3年を超えない範囲内で施行されるとされています。成年後見制度の見直しは公布の日から2年6月を超えない範囲内です。 [1]

2026年10月27日時点で、施行日を定める政令は当事務所では確認できていません(未確認)。公布日が2026年6月24日ですので、押印の任意化などは遅くとも2027年6月まで、保管証書遺言は遅くとも2029年6月までに施行される見込みですが、実際の施行日は法務省の案内で確認してください。

いま使える方式:自筆証書遺言と法務局の保管制度

法務省民事局のパンフレット(令和7年度改訂版)では、現在の自筆証書遺言について、遺言の全文(財産目録を除く)・作成日付・氏名を自書し、押印することとされています。財産目録は自書しなくてもよく、パソコンで作成したものや通帳のコピーを添付できますが、各ページに署名と押印が必要です。また、公正証書遺言は公証人が関与し、2名以上の証人が立ち会って作成され、公証役場で保管されるため検認が不要で、財産の価額に応じた手数料がかかると説明されています。法務局に預けていない自筆証書遺言は、家庭裁判所の検認が必要です。 [3]

自筆証書遺言書保管制度を利用すると、法務局の職員が全文・日付・氏名の自書や押印の有無といった方式の外形的な確認を行い、原本と画像データを長期間保管するため、紛失や改ざんを防ぐことができ、相続開始後の検認も不要になります。遺言者が指定した人(3名まで)に通知する「指定者通知」と、相続開始後に相続人等へ知らせる「関係遺言書保管通知」のしくみもあります。保管の申請は遺言者本人が法務局に出向いて本人確認を受ける必要があり、法務局は遺言の内容に関する相談には応じません。 [3]

保管制度の手数料は、遺言書の保管の申請が1通につき3,900円で、収入印紙で納めます。保管の申請の撤回や住所等の変更の届出には手数料はかかりません。閲覧や証明書の交付にはそれぞれ別の手数料があります。 [4]

大阪で法務局に預けるときの手続

大阪法務局の案内では、保管の申請は、遺言者の住所地・本籍地・所有する不動産の所在地のいずれかを管轄する法務局(遺言書保管所)で行います。必要書類は、自筆証書遺言書、保管申請書、顔写真付きの官公署発行の身分証明書、本籍と筆頭者の記載がある住民票、3,900円分の収入印紙の5点です。すべての手続は予約制で、専用ホームページからは24時間予約でき、所要時間は待ち時間を含めて60分から90分ほどとされています。2026年2月2日からは、大阪法務局本局に限り、提出書類の写しを電子メールで送って形式面の事前チェックを受けることができます(府内の支局では実施していません)。 [5]

親なきあとの遺言で、今できること

障がいのあるお子さんがいるご家庭では、「誰に何を遺すか」を決めるだけでなく、お子さんが受け取った財産をその後どう守り、生活に使っていくかまで考える必要があります。以下は公的な事実ではなく、当事務所からの編集上の提案です。

  • 新しい保管証書遺言の施行を待たずに、今の方式(自筆証書遺言+法務局の保管制度、または公正証書遺言)で作っておくことも考えられます。施行後に新しい方式で作り直すかどうかは、そのときに検討する
  • 自筆で作る場合は、現在のルール(全文・日付・氏名の自書と押印、財産目録の各ページへの署名・押印)を守る。法務局に預けておくと、方式の外形的な確認・紛失の防止・検認の省略につながる(法務局の確認は方式の外形的なものに限られ、内容の確認ではありません)
  • 法務局は遺言の内容に関する相談には応じません。「お子さんの生活費をどう確保するか」「不動産を誰が管理するか」「遺言の内容を実際に実行する人を誰にするか」といった中身は、作成前に専門家と整理する
  • お子さんが財産を受け取った後の管理・見守りについて、成年後見制度や民事信託(福祉型信託)とあわせて考える。遺言だけでは、受け取った後の使い方までは決められないことがある
  • 遺言を作ったことと、預け先(法務局の保管証、公証役場)を、信頼できる家族や支援者に伝えておく。保管制度の指定者通知も活用できる

参考情報・出典

  1. 法務省「『民法等の一部を改正する法律』(成年後見及び遺言の制度の見直し)について」資料の日付:2026年6月30日(ページに記載の日付)。対象地域:全国。参照箇所:成立・公布日と法律番号、遺言制度の見直しの概要(保管証書遺言の創設)、施行期日。取得・確認日:2026年10月27日。
  2. 法務省「民法等の一部を改正する法律の概要」(成年後見及び遺言の制度の見直し)資料の日付:不明(随時更新と案内)。対象地域:全国。参照箇所:保管証書遺言の方式、押印要件の廃止(任意化)、証人等の欠格事由、死亡危急時遺言の新方式、施行期日。取得・確認日:2026年10月27日。
  3. 法務省民事局「自筆証書遺言書保管制度のご案内」(令和7年度改訂版)資料の日付:2026年1月(作成年月の表示)。対象地域:全国。参照箇所:自筆証書遺言・公正証書遺言の方式、保管制度のメリット(外形確認・検認不要・通知)、本人出頭、法務局は内容の相談に応じないこと。取得・確認日:2026年10月27日。
  4. 法務省「09 手数料|自筆証書遺言書保管制度」資料の日付:不明。対象地域:全国。参照箇所:保管申請・閲覧・証明書交付の手数料、撤回・変更届出の手数料不要、収入印紙による納付。取得・確認日:2026年10月27日。
  5. 大阪法務局「第4 法務局に保管してみましょう!」資料の日付:2026年2月2日(ページ更新日)。対象地域:大阪府。参照箇所:管轄、必要書類、予約、所要時間、本局での事前チェック。取得・確認日:2026年10月27日。

遺言と当事務所への相談について

遺言書の法務局への保管申請はご本人が法務局で行い、公正証書遺言は公証役場(公証人)で作成します。不動産の名義変更(登記)は司法書士、相続税は税理士・税務署、遺留分など相続人どうしの争いに関することは弁護士の取り扱いです。

当事務所は、障がいのあるお子さんの生活を守る形での遺言書の文案作成、公正証書遺言の準備のお手伝い、民事信託・任意後見契約と組み合わせた備えのご相談をお受けし、内容に応じて関係する専門職へおつなぎします。

当事務所のお問い合わせ方法を見る