親なきあとの準備
公正証書のデジタル化(2025年10月施行):任意後見契約や公正証書遺言の作り方はどう変わった?親なきあとの備えで知っておきたいこと
2025年10月1日から、公正証書の作成手続がデジタル化され、申込みのオンライン化、公証人が相当と認めた場合のウェブ会議、電子データでの作成・保存ができるようになりました。親なきあとの備えで使うことの多い任意後見契約や公正証書遺言にどう関わるのかを、法務省の案内に基づいて説明し、確認しておきたい点を整理します。
なぜ親なきあとの備えに「公正証書」が関わるのか
法務省の案内では、任意後見制度は、本人が十分な判断能力を持っている間に、将来の任意後見人と委任する事務の内容を公正証書による契約で定めておき、判断能力が不十分になった後に任意後見人が本人に代わって事務を行う制度とされています。任意後見契約は、家庭裁判所が任意後見監督人を選任した時から効力が生じます。 [1]
また、法務省民事局のパンフレットでは、公正証書遺言は公証人が関与し、2名以上の証人が立ち会って作成され、公証役場で保管されるため家庭裁判所の検認が不要で、財産の価額に応じた手数料がかかると説明されています。 [2]
何が変わったか:2025年10月1日施行のデジタル化
根拠となるのは「民事関係手続等における情報通信技術の活用等の推進を図るための関係法律の整備に関する法律」(令和5年法律第53号。2023年6月6日成立、同月14日公布)です。法務省の案内では、このうち公正証書の作成に係る一連の手続のデジタル化は2025年(令和7年)10月1日に施行されたとされています。 [3]
法務省は「公正証書の作成に係る一連の手続のデジタル化について」の案内ページを設け、概要資料のほか、施行に伴う政令(令和7年政令第263号)と法務省関係省令(令和7年法務省令第40号)を掲載しています。 [4]
デジタル化で変わった4つの場面
法務省民事局の概要資料(令和7年12月)では、デジタル化の内容が次の4つの場面に分けて説明されています。 [5]
1. 申込み(嘱託)
公証役場へ出向かなくても、インターネットから嘱託(公正証書の作成の申込み)ができるようになりました。本人確認は、印鑑証明書などの書面のほか、電子データでも行えます。マイナンバーカード等で電子署名をし、電子証明書を付けて送る仕組みが示されています。
2. 公証人への説明・内容の確認
嘱託人(申込みをした人)が希望し、公証人が相当と認めた場合には、公証人の面前で行う手続をウェブ会議で行うことができます。公証人は、通話している人の本人確認や、通話場所が適切かどうかを確認します。相当と認めるかどうかの判断基準は、全国で統一的に運用するために通達で定めるとされています。
3. 公正証書の作成・保存
公正証書は原則として電子データで作成・保存されます。嘱託人等はディスプレイ上で電子ペンを使って手書きする「電子サイン」で承認でき、押印は不要です。公証人は官職証明書を用いて電子署名をします。
4. 正本・謄本の受け取り
電子データで作られた公正証書は、画面表示や書面出力で閲覧できます。受け取りは、出力した書面の交付、メール送信(クラウド経由のダウンロード)、USBメモリ等への記録から選べます。書面での交付も引き続き選択できます。
ウェブ会議が使えるかは公証人の判断、紙の交付も選べる
同じ概要資料では、公正証書を「法律行為その他の私権に関する事実について公証人が作成する証書」と説明し、例として金銭貸借・売買・賃貸借・遺言などを挙げています。手数料については、公証人手数料令の見直しが行われるとされていますが、具体的な金額は概要資料には記載されていません。 [5]
親なきあとの備えで、今確認しておきたいこと
以下は公的な事実ではなく、当事務所からの編集上の提案です。
- 公証役場へ出向くことが難しい事情(親の体調、遠方に住んでいるなど)があるなら、ウェブ会議や電子交付が使えるかを公証役場に相談する、という選択肢ができたことを知っておく
- デジタル化で変わったのは「作り方」であって、任意後見契約や遺言の中身の重要性は変わらない。誰に何を任せるか、お子さんの生活費や住まいをどう守るかを、作成前に整理する
- 電子データで受け取った正本・謄本は、家族がその存在に気づかないこともある。どこに保管したか(紙で受け取ったならその場所)を、信頼できる家族や支援者に伝えておく
- 任意後見の仕組みや成年後見制度の見直し(2026年改正)との関係は 成年後見制度の見直し(2026年改正)と、親なきあとの備えで今できること を、遺言の方式や法務局の保管制度、2026年改正で新設される保管証書遺言については 遺言制度の見直し(2026年改正) の記事を、あわせて確認する
参考情報・出典
- 法務省「Q16~Q20 任意後見制度について」資料の日付:不明。対象地域:全国。参照箇所:Q16 任意後見制度の概要(公正証書による契約)、Q17 効力が生じる時期。取得・確認日:2026年10月27日。
- 法務省民事局「自筆証書遺言書保管制度のご案内」(令和7年度改訂版)資料の日付:2026年1月(作成年月の表示)。対象地域:全国。参照箇所:遺言とは(公正証書遺言の説明)。取得・確認日:2026年10月27日。
- 法務省「民事関係手続等における情報通信技術の活用等の推進を図るための関係法律の整備に関する法律について」資料の日付:2025年12月26日(ページ更新日)。対象地域:全国。参照箇所:法律名・法律番号・成立日・公布日、公正証書の作成に係る一連の手続のデジタル化の施行日。取得・確認日:2026年10月27日。
- 法務省「公正証書の作成に係る一連の手続のデジタル化について」資料の日付:2025年12月24日(ページ更新日)。対象地域:全国。参照箇所:概要資料、関係政令(令和7年政令第263号)・省令(令和7年法務省令第40号)の掲載。取得・確認日:2026年10月27日。
- 法務省民事局「公正証書に係る一連の手続のデジタル化について」(令和7年12月)資料の日付:2025年12月(版表示)。対象地域:全国。参照箇所:施行期日、嘱託・陳述と内容確認・作成と保存・正本謄抄本の交付の各デジタル化、公正証書の定義と例、手数料令の見直し。取得・確認日:2026年10月27日。